八甲田山山スキー山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

八甲田山 

2013年3月29日(金)~4月1日(月)
 今年の春は3月16-17日の野伏ヶ岳に続いて雪山を、そして山スキーを楽しめる所をとして以前4度ほど(1995.4、1996.3、2001.4および2005.2)滑ったことのある八甲田山を選んだ。2月~3月にはアオモリトドマツの林は樹氷のモンスター群が広がり、ロープウェーで一般のスキーヤーや観光客もアクセスできるので蔵王のそれと共に人気がある。3月中旬以降はモンスターはなくなるものの、天候が安定してきて安全な山スキーが期待できる。
 山スキーのツアールートが多数整備されている山域は国内ではこの八甲田山のみと言ってよい。代表的なルートは竹ざおと標識板の案内が続いていて、安全に下山口にたどり着けるようになっている。もちろん自然を相手にする山スキーなので、指定ルート以外に、登山者が自分でコースを探りながら行くルートも南八甲田にいくつかある。

3月29日(金)曇り後晴れ
 今回会員3名と会員外1名、計4名での山行予定であったが、5日前に会員1名が不測の怪我で不参加となり、南井、三谷そして清水の3名によるものとなった。アルペンスキー、テレマークスキーそして山スキーの混成となった。
 伊丹空港に参加者3名が集合し、予定通り青森へ飛ぶ。
 空港で車を借り、真っ直ぐ八甲田山へ向かう。今年の青森の雪は多く、途中の雲谷(もや)スキー場あたりでも積雪が1mほどあった。宿舎の八甲田リゾートホテルは八甲田山ロープウェー山麓駅の南100m位のところにありら便利がいい。
 ホテルで昼食にしてからロープウェーを利用して、山頂公園駅からダイレクトコース、フォレストコース、そしてもう一度ダイレクトコースを滑る。
 ダイレクトコースの上部は雪面がアイスバーン化していて滑りにくく、気分が悪い。八甲田山でこれほど悪いコンディションは初めてである。中間部はブナ林の中で問題なく滑れて気を取り戻す。下部のゲレンデはまたアイスバーンになっていて楽しくない。
 フォレストコースは上部が広い雪面が出ているが傾斜が急で、雪も硬く楽しくない。
 これでこの日のスキーを終えた。
 後はホテルで温泉と食事でのんびりする。ホテルの青森の海山の材料を使った食事には皆満足した。

3月30日(土)晴れ後曇り後晴れ
 この日は酸ヶ湯から傘松峠付近経由仙人岱そして硫黄岳、できれば大岳もというコースである。広々とした斜面を滑れるルートである。
 ところが宿舎で4月1日の国道103号線、傘松峠の開通、八甲田循環道路開通を前にした雪壁ウォーキングが青森テレビの主催で行われ、車は酸ヶ湯のすぐ先の八甲田ホテルまでしか行けないということ聞いて、それくらいなら問題なしと出かけた。
 ウォーキングに来たバスや客で酸ヶ湯は賑わっていた。その日のテレビニュースによれば私達が見たよりずっと多い600人が参加したとか。
 昼食のパン、果物そして茶などを買って八甲田ホテルの駐車場に車を留める。ところがウォーキング参加を予約した人以外は103号線を歩けないと排除され、地獄沼の脇から国道の左手の雪原を歩かされることとなった。起伏があり、くねくねと回り道するなど道を行くより大分時間がかかる。途中何回か国道の雪壁の上に立ったが壁の深さは10m近い。
 石倉岳の山裾(石倉岳分岐)へは当初予定の倍も長い1時間40分もかかってしまった。ここから石倉岳の裾を左へと巻き気味に登り、傘松峠へ向う国道とは離れて行く。谷の上部の平坦部を渡ると広い雪原が広がる。上の石倉岳の頂上には大きな雪庇ができていて、それが落ちてくれば、下にいる我々は逃げようない。早々に右上のアオモリトドマツの段丘に上がり昼食とする。この頃、日は陰り、冷たい風に少し雪も舞うようになってきた。寒いのでツェルトを出して、3人一緒に被ると暖かい。
 シールを付けるのは初めてという三谷さんもここからシール登高とする。 コースを硫黄岳中腹をトラバースするように取ったが、もう少し下の傾斜の緩い斜面をトラバースすべきであった。右下がりの硬い雪の急斜面のトラバースはシールの板には少し危険と思えた。
 竹さおが連続する睡蓮沼からのルートをかなり下に見て斜行して、仙人岱のコルに着く。
 ここで南井さんが先に硫黄岳へ往復する。、そして三谷さんのシール剥がしと収納を手伝ってから清水も硫黄岳へ往復する。登り15分程度だ。
 仙人岱ヒュッテなどに寄った後、睡蓮沼ルートを気持ちよく滑走して昼食をした場所へ、そしてさらに石倉岳の裾を巻いて分岐へ戻った。この分岐から国道沿いの雪道は登る時に比べれば楽なものの、ルンルンとは行かず、結構八甲田ホテルまで時間がかかった。

 一旦八甲田リゾートホテルへ戻り、夕刻、国道394号線の城ヶ倉大橋を見に出かける。2005年に開通したこの立派な橋は谷底から100mもあり、この完成によって黒石市方面から八甲田山へのアクセスが随分と便利になった。
 夕陽に染まった渓谷やブナ林は素晴らしかったが、もうすぐ芽吹きしてくるブナの芽を覆っている鱗芽がふくらみ赤くなる、"ブナ紅葉"がとりわけ印象的であった。これほど赤くそして山肌を広く覆う"ブナ紅葉"を初めての経験だ。やがて赤い鱗芽が雪面を覆って赤い林床となり、林は新緑にそまるようになることだろう。

     
 地獄沼から山沿いの雪原を行く    この日行われた雪の壁の道ウォーキング
     
 硫黄岳麓でツェルトに入って昼食    城ヶ倉付近から見たブナ紅葉の八甲田西麓

3月31日(日)曇り後晴れ
 この日から三谷さんは、下界の観光へと出かけるので、会員2名でスキー登山を続ける。
 
ロープウェーで山頂公園駅まて行き、ここから宮様ルートを下り、酸ヶ湯に出る。
 山頂公園駅から田茂萢岳(1324m)の緩い山頂の左の広い雪原を半分歩きながら下る。ここは夏は湿原になっている。
 目の前の赤倉岳への稜線の登りが始まる手前に宮様ルートと書いた標識と右下へ続く竹さおの列が見える。標識は宮様1番から48番、その後は大岳ルートの番号が付けられている。
 しばらくアオモリトドマツの生えた斜面を下るが、雪は適当なしまり方で気持ちよくターンを繰り返してアッと言う間に高度を下げて、田茂萢岳を見上げるようになる。小沢を越えると上毛無岱で、ここからさらに大岳へ登るスキースクールの団体20名ほどが、シールを付ける準備をしていた。我々もここで10分ほど休憩した後、広々した上毛無岱を下る。傾斜は緩いが、雪の表面が凍っていてよく滑る。大岳は山頂部はガスに隠れていたが、南八甲田の櫛ヶ峰や横岳を望むことができた。
 やがて標識48番から先が急なブナ林の坂で雪も硬く、樹間も狭く、途中で滑降をあきらめて、標高差30mほどをつぼ足で下る。
 ここからわずかで酸ヶ湯の上の裸の雪の斜面の上に着く。真下に酸ヶ湯の建物群が見える。左側は雪が厚さ2、3mで切れて落ちていて、その上手には入れないように柵がしてあった。斜面の中央部を慎重にターンしながら降りて酸ヶ湯に着いた。ロープウェー頂上公園駅を出てからわずかに2時間であった。スキーはさすがに速い。

 ホテルに戻っての昼食後、ロープウェーを使ってダイレクトコースを2本滑ってこの日のスキーを終えた。
この日も夕方になるとよく晴れ上がった。時間もあるので翌日の南八甲田山、横岳の登山口を偵察に車で出かけた。その帰路、田茂萢岳から大岳まで真っ白な峰を連ねているのを見ることができた。

     
 頂上公園駅付近から手前の田茂萢岳、そして
左から赤倉岳、井戸岳そして大岳を望む
   宮様ルート分岐点 遠景は大岳
     
 酸ヶ湯への降り口の急斜面    城ヶ倉付近から見た北八甲田山の連嶺

4月1日(月)晴れ
 この日横岳へ登るルートは国道国道394号線から真っ直ぐ同じ勾配で頂上へ伸びている稜線である。、割に幅が広い。この稜線は田茂萢岳などからもはっきり分かる。
 城ヶ倉大橋から1km強黒石側に行ったところに50mほどの長さの"城ヶ倉スノーシェルター"がある。このシェルターの黒石側出口の10m先、左に横岳へ登る切り分けが付けられていてここから登山を開始する。標高は約750mである。日曜日に1~2名登ったらしく、踏み跡が残っている。初めは若いブナの木の林の中を真っ直ぐ登る。つぼ足で沈み込むことなく快適に登れる。左側には沢があり、路に間違うこともない。やがて林は大きなブナの木からなる林になり、樹間が広がり、帰りのスキー滑降が楽しみだ。
 1050m地点で足が時々20cmほど沈むようになり、清水はシールをつけたスキー登高に切り替える。しかしそれ以後沈み込みもなく、南井さんもつぼ足で十分登ることができた。  傾斜が少し緩くなる辺りから背の低いアオモリトドマツの林に変り、稜線の東側は木立の全くない雪の斜面が続くようになる。左には逆川岳へと続く稜線が少し上に見え、登るにつれこちらがそれよりも上になる。この稜線のアオモリトドマツの少しまばらな林は東山魁夷の"雪原譜"を想い起こさせる。
 頂上付近は広大な雪原となっていてどこが最高点なのか分からない。GPSで確認すると100m以上通り過ぎている。北西側のアオモリトドマツの生えている辺りが頂上かと引き返して近くで昼食とした。北八甲田の全ての峰々が見渡せる。南八甲田の最高峰、櫛ヶ峰は雪原の上にわずかに鈍頭を覗かせていた。
 十分に展望を楽しんだ後、スキーを履いて下りにかかる。頂上付近の雪原は表面がクラストしていてスキー板がガタガタしていたが、下るにつれ滑りやすい雪に変わり、背の低いアオモリトドマツの間を、そしてブナの木々の間を気持ちよくターンしながら下る。時々登り時のトレースを確認しながら左右に振るが、別に大きくずれる心配もない。まさにアッと言う間にコースの2/3を下り、樹間が1~2mと狭くなったブナの若木の林に入る。初め心配していたようなこともなく、ここも無事ずっと滑り下ることができた。
 頂上からわずか35分、ここでもスキーは速い。所要時間は登りの1/4に過ぎない。

 ホテルに帰った後、温泉で汗を流し、荷造りした後、青森市内へ向けて車を走らせた。折角と言うことで北の海を望める青森港へ行き、さらに近くにある青森県立郷土館に寄ってみた。丸山三内遺跡で知られるように、青森県は縄文文化が栄えた土地柄で、この郷土館の展示品は素晴らしかった。壷や土偶等の縄文土器や新潟姫川からもたらされたヒスイを加工した装飾品等、時間があればもっとゆっくり見たいものが多かった。
 この後青森空港へ戻り、バスで着いた三谷さんと再会した。
 空港からは山頂部分を真っ白に雪をまとった八甲田山がきれいに見えた。 (清水信)

     
 横岳中腹のブナ林  逆川岳への稜線のアオモリトドマツの林
     
 横岳頂上のアオモリトドマツの樹氷    横岳山頂から北八甲田の山々
     
 頂上から滑降開始 初めは樹間が広く、徐々に
狭まる
  青森空港から見た北八甲田山 

八甲田山雪中行軍遭難事件
 八甲田山といえば新田次郎の著作「八甲田山死の彷徨」で知られる1902年( 明治35年)1月に起きた陸軍の雪中行軍の遭難事件がある。日露戦争前の対ロシアを意識した寒冷地訓練で青森歩兵連隊の参加者210名中199名が死亡という大惨事であった。
 丁度この期間中の1月25日に旭川でマイナス41℃が記録され、これはその後長い間日本での最低気温とされるほどの厳しい寒波が来ていた。推定ではこの時八甲田てはマスナス20℃にはなっていたと言われている。着用していた衣類等も綿製の古い型のものであったなど旧来然とした装備であったのも遭難死の原因にはなっている。
 しかし同時に行われた弘前歩兵連隊の行軍が遭難死ゼロで踏破した結果と比較して遭難の主要な原因としては青森歩兵連隊の情報収集力、訓練計画、および指揮等に問題があったとされている。
 この青森歩兵連隊の行軍のコースは現在登山やスキーが行われている八甲田山の峰々を越えるものでなく、山の東から北の平原と入り組んだ谷を踏破するものであった。(清水信)

参加者 会員2
(清水信、南井)、会員外1名(三谷)、計3名

コースタイム

3月29日(金) 3月30日(土)  3月31日(日)    4月1日(月)    
伊丹空港 7:50/8:35 八甲田リゾートH  8:15  八甲田リゾートH  8:35  八甲田リゾートH   
青森空港 10:05/10:30 酸ヶ湯  8:30/8:50  ロープウェー麓駅  8:40/9:00  橋脇駐車スペース  8:10/8:15 
八甲田リゾートH 11:30/12:15 八甲田H  9:00/9:10  同頂上公園駅 9:10/9:25  横岳登山口(750)  8:20/8:25
ロープウェー麓駅 12:20/12:40 石倉岳分岐   10:50  宮様ルート分岐  9:55  1050m地点 9:30/9:40  
同頂上公園駅 12:50/13:05 1140m地点 昼食  11:30/12:00  上毛無岱  10:10/10:20  横岳山頂(1339.4)  10:30/11:10
ダイレクトコース 仙人岱 13:00/14:05  急斜面(1070-1110m)  10:40/10:50  横岳登山口(750)  1145/11:50 
ロープウェー麓駅 13:45/14:00 硫黄岳  14:20/14:25 酸ヶ湯上 11:00  橋脇駐車スペース  11:55/12:05 
同頂上公園駅 14:10/14:20 仙人岱ダイレクト  14:35 酸ヶ湯  11:10/11:25  八甲田リゾートH   12:20/13:30 
フォレストコース 1140m地点    14:50  八甲田リゾートH   11:40/12:30  青森港  14:20/14:30 
ロープウェー麓駅 14:55/15:00 石倉岳分岐     15:05  ロープウェー麓駅 12:35/1345  県立郷土館  14:40/15:00 
同頂上公園駅 15:10/15:20 八甲田H   16:05  同頂上公園駅 12:50/13:00 青森空港  15:20/17:50 
ダイレクトコース 酸ヶ湯買い物 16:10/17:00 ダイレクトコース   伊丹空港  19:20 
八甲田リゾートH 15:50 城ヶ倉大橋 17:10/17:40 ロープウェー麓駅 13:30/13:40     
同頂上公園駅 13:50/13:55     
ダイレクトコース   
      八甲田リゾートH   14:25 
      横岳登山口偵察  15:00/15:20 
      酸ヶ湯買い物 15:20/15:40
      八甲田リゾートH  16:00      
                 
      硫黄岳ルートまとめ    宮様ルートまとめ    横岳のまとめ   
      所要時間  6:55  所要時間  1:45  所要時間  3:40 
      休憩時間  1:45  休憩時間  0:10  休憩時間  0:55 
      歩行、滑走時間  5:10  歩行、滑走時間  1:35  歩行、滑走時間  2:45 
      距離  12.3km  距離  5.3km  距離  6.9km 
      累積登高(下降)  1430m  累積下降  428m  累積登高(下降)  777m 

 
                      八甲田山トラック地図

この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである。

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