佐武流山(個人)山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

佐武流山(2191.6m)山行記録
2019,年 10月8日(火)ー9日(水)

 山の名は「さぶるやま」または「さぶりゅうやま」と読む。
 
 学生時代、尾瀬にも勝る標高の大湿原の広がる苗場山(2145.2m)に興味を覚えたとき、その頂上台地の湿原を縦断して、南へ伸びる稜線を赤倉山(1938.5m)、佐武流山(2191.6m)、さらには上越国境稜線の白砂山(2139.8m)へ至る縦走は出来ないかと何度も夢見たことがあった。しかしその行程はいかにも長く、途中には避難小屋もない、さらに赤倉山から先は道も確かでないないようだった。戦前にはあった路も荒れ果て、打ち捨てられてしまったようだった。
 その後2005年6月に野反湖から白砂山へ登ったが、気になっていた佐武流山そして苗場山へ伸びる稜線は険しく、ヤブの連続としか見えなかった。

 最近のガイドブックやNET情報で佐武流山のことを調べなおしてみると、昔あった秋山郷和山からのコースが手入れされて、再開されている。それでも標準で12時間弱かかるロングコースだ。登山口からの標高差は1100mに余る。そしてまず秋山郷へ入るのが一苦労だ。津南から30km近く渓谷に付けられた1.5車線幅も続く国道405号線を車で走らなくてはならない。

10月8日(火) 曇り後雨
 登山口である長野県栄村は 6日の天気予報によれば、10日と11日に晴天とされていたが、7日の予報では1日繰り上がって9日と10日が晴天と変わった。
 これに合わせ、出発を予定より1日早めて8日の朝6時として家を出た。
 川西ICー多賀SA(朝食)ー内津SAー小黒川PAー小布施SA(昼食)ー豊田飯山ICー飯山ー津南町大割野ー秋山郷栃川高原キャンプ場と約540kmを走った。小黒川PAで寝不足解消の15分程度の仮眠を取る。

 飯山から津南では強い雨が車のフロントガラスを打ち続けた。
 15時過ぎに栃川高原キャンプ場に着き、管理をしている宿「ひだまり」で受付を済ます。代金は1日1,500円で安く助かる。
 今日のキャンプ場の客は私ひとりで、宿もにも客はなかった。林道の向こう側がキャンプ用の芝生広場になっているが、雨が降っているので、おかみさんのすすめに従い、手前の炊事場の屋根の下にテントを張らせてもらう。
 明日の登山口を確認するため車で林道を3km行くと標識と登山届の投入箱がある登山口があった。道幅が広くなっていて車を10台近く停められる。

 夕食は自家製の野菜と自宅で用意したり途中の飯山のベイシアで購入した食材を使ってスパゲッティーを作った。満腹するまで食べまた飲んだ。
 18時にはぐっすり寝入った。途中から急に冷え込んできて、その後はうつらうつらと朝の来るのを待った。カイロを持って漏って来るべきだったと思いながらセーター、レインコート等を着込んでシュラフの口を絞った。後で気が付いたが、カイロはザツクの薬等のケースに入れて持ってきていた。馬鹿なことだった。
 夜半まで小雨が降り続き、翌日は本当に晴れるのか多少不安だった。

10月9日(水) 晴れ
 明け方は冷え込みもきつかった。 後で「ひだまり」の主人によればこの朝は7℃だったとのことで、この時期にしては強い寒波が来たようだった。

 朝食は最近お気に入りのオクラ納豆パンとバナナで簡単に済まし、テントはそのままにして出発する。
 登山口に着くとすでに車が2台停まっている。それぞれ単独行のひとだった。ともに50歳台と言ったところか。群馬県前橋市から来たひとと先にこの近道登山口を出発する。
 近道は曲がりくねった林道を短縮する形で付いているが、濡れた笹が垂れて路をふさいでいて歩きにくい。足を取られないように気を使いながら進む。近道の半ばで明るくなってきたのでヘッドランプを消す。

 やがて林道と合流しその林道を行くと右側に渡渉点への降り口を示す「佐武流山入口 檜俣川まで15分」と書かれた白い標識板があり、これにしたがって谷へ下る。標高差120mほどで、路の左下には檜俣川へ合流する小沢が流れている。
 渡渉点の川床は一枚岩で、10m幅で水が流れ、すぐ下は2m程の落差で落ちている。ロープが渡され、それを握るようにして対岸に渡る。深いところでも20-30cmなので、スパッツをきちんとつけていれば水は靴の中には入ってこない。

 
近道登山口     渡渉点へ降る路の入口
     
檜俣川渡渉点     

 ここからは急な登りとなる。群馬のひとは、速そうなので、先に行ってもらう。残念ながら、昨日の早朝からの運転や今朝の寝不足もあって、こちらは元気溌剌といかない。仕方ないかなどと思い、マイペースで登る。やがて後から来たもうひとりのひとにも路を譲る。
 桧やシャクナゲ等の木の根や岩をよじ登る感じで行くが、直径70-80cmのツガの倒木がまともに路をふさいで、脇の斜面や狭い隙間を潜ったりしなければならないところが何箇所かあって苦労した。
 こんなことでひょっとして佐武流山までたどりつけるか、心配になった。とにかく陽のある16時までには渡渉点にもどる必要があると、いろいろ暗算してみる。休憩時には水とともにパンを少しずつかじるなどして登る。

 急坂を登り切った針葉樹に囲まれたスペースを物思平と言うらしいが、思わせぶりの名前だ。さらにずっと林の中を行くがまだ展望は開けない。やがて現れる尖ったピークがワルサ峰(1870m)だ。ここからは展望も開けて北に苗場山の山頂の湿原が黄色に染まっていた。そしてそこから右へ目を向けていくと赤倉山そして佐武流山に向かっていくつものピークが連なっている。長い稜線だ。手前の深い谷は西赤沢だ。
 やっとカメラの出番で気持ちよく何枚も写真を撮った。 しかし佐武流山は手前のきれいな形の1891mピークに隠れて見えない。ワルサ峰の南はガレていて一旦ロープをたらした急坂を降り、もう一度目の前のピークへと登り返す。

 
こんな登り路が続く    ワルサ峰から苗場山を見る 
   
 ワルサ峰から南を望む 左遠景は白砂山(群馬、
新潟、長野の3県境) 右へ佐武流への稜線が続く
その左手前が苗場山から佐武流山への稜線く
  ワルサ峰(1870m)を振り返る 中央右下にかけて
ロープを張った急なガレ場がある

 幸いだったのはこのワルサ峰から先へ進むと路がよくなり、ピツチが上がってきたことだ。1891mピークを越えてすぐに苗場山、赤倉山からの縦走路が合流する。「西赤沢源頭」とか「水場 赤倉山方面へ10分」の標識が木に付けられている。
 ここから先の稜線の右側が白く輝いている。今朝の寒波で霧氷が着いたらしい。さらに背の低いシラビソやダケカンバの林の中の路を登るとゆるいピーク(2100m)となる。このあたりで、先に行った人達が降りてくるのに出会う。私より40分近く先に行ったようだ。

 
西赤沢源頭 ここで苗場山からの路と合流する 

 さらに行くと「霧氷」(?注意)の枝先をくぐるようになる。
 「霧氷」と言うのは「樹氷」、「粗氷」、そして「樹霜」の総称だそうだ。「樹氷」はエビノ尻尾とかモンスターのように0℃以下の過冷却の霧が付着してできたもので、空気を含んでいるので半透明~白色、「粗氷」は過冷却の水滴が付着したもので半透明、そして「樹霜」は水蒸気が樹枝等に付着した樹枝状ないし針状となったものだ。生成したものでは樹氷と樹霜の区別は難しいこともありそうだ。
 今見ているのはダケカンバの枝先に着いた透明な氷だ。よく見る霧氷(樹氷)のような白い樹枝状結晶ではなく、枝先全体を透明な氷が包み込んでいる。正確には「雨氷」と言い、0℃以下の過冷却の雨が枝に付着してできるものだ。陽に当たると光を反射してまぶしく、遠くからは白く見える。

 小さなアップダウンのある稜線を進むと小さな針葉樹に囲まれた佐武流山山頂に着いた。白いの標柱と三角点のある山頂だった。
 腰を降ろして短かい昼食とする。申し分ない青空の下、帰りの時間の見通しもついて、しばし満足感に浸った。 

   
ダケカンバの枝に着いた雨氷   佐武流山山頂手前から見た苗場山と赤倉山(右) 
   
 ダケカンバの枝に着いた雨氷   佐武流山山頂 

 帰りは様子が分かっているので気分も軽く快調に歩けた。まだ陽も高い。
 物思平から渡渉点へ下る頃となると15時台で、太陽も少し傾いて西の稜線に近づいたことを気付かせられる。しかし明るいうちに渡渉を終え、林道に出られるのは確かと、時に慎重に、時にどんどんと路を降り、檜俣川に降りた。ここから林道へはわずかな登りと思い込んでいたが意外と遠かったのは意識にはなかったものの疲れがあったためだろうか。

   
ワルサ峰から西の展望 烏帽子山(2236m)と
裏岩菅山(最奥2341m) 
  ワルサ峰から西北の展望 中央奥に妙高山(2445.8m)と
火打山(2461.7m)右は鳥甲山(2038m)

 林道に出てから、近道へ入るのは止めて、ズンズンと速足で進める林道をそのまま進み、途中切明温泉へ向かう分岐を通って車に戻った。
 すでに陽は暮れて薄暗くなっていた。時間的には往路、近道利用ては1:40、帰路、林道通しでは1:25だった。車で切明分岐そばのゲートまで行けばさらに林道通しでは1:15位となり、林道通しがより短時間となる。
 登山口にはすでに私の車しかなく、先の2名は戻ったらしい。
 テントに帰ってから「ひだまり」の温泉に浸かって汗を流し、いい気分になってから暗い中、カレー夕食を作り、ビールを飲んですぐぐっすり寝ることができた。

 今回佐武流山という長距離、長時間かかる奥深い山を無事登れて永年の夢を果たすことができた。こうした探検的な感じ、そして事前に心配や緊張もする山行きはいつまでも心に残るものだ。積雪期の平ヶ岳や山深いペテガリ岳等いくつかが思い出される。このような山は私にはもうわずかしか残されていない気もする。そのような山々をこれからも大事に想うことにしよう。 (文 清水)

参加者    会員1名 清水

コースタイム

栃川高原キャンプ場(920m) 5:30 行動時間 11:45
近道 登山口(1060m) 5:40/5:45 歩行時間 11:10
林道分岐(1230m) 6:50 休憩時間 0:35
渡渉点入口(1300m) 7:25
渡渉点(1180m) 7:35 GPS Geographica
1480m地点 8:30/8:35 測定点数 561
物思平(1560m) 9:30/9:35 歩行距離 19.81km
ワルサ峰(1870m) 10:05 累積登高 1650m
1891mピーク 10:40/10:45 累積下降 1650m
西赤沢源頭(1930m) 11:00
佐武流山山頂(2191.6m) 12:05/12:20
ワルサ峰(1870m) 14:00/14:05
物思平(1560m) 15:00
渡渉点(1180m) 15:40
渡渉点入口(1300m) 16:05
林道分岐(1230m) 16:30
ゲート、切明分岐 17:20
近道 登山口(1060m) 17:30/17:40
栃川高原キャンプ場(920m) 17:50


佐武流山トラック地図 



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